「ワイルド・スワン」を読みました~
「ワイルド・スワン」は、1991年に発表された中国人女性作家ユン・チアンの自伝的ノンフィクションで全世界で1000万部を超えるベストセラーです。ただ中国では出版される見込みはまったくないという問題作です。
文庫本でも、全3巻の大作なので、内容を簡単に言うのは、難しいのですが、激動の中国近代史を背景に清朝末期の祖母の誕生1909年から父と母の人生、そしてユン・チアン本人の1978年のイギリス留学までの一族の苦難の歴史を冷静な目でとらえています。
<上巻>
15歳で著者の祖母は軍閥将軍の妾になる。中国全土で軍閥が勢力をぶつけあう1924年のことであった。続く満州国の成立。直前に生まれた母は、新しい支配者日本の過酷な占領政策を体験する。戦後、夫とともに共産党で昇進する母。そして中華人民共和国の成立後、反革命鎮圧運動の只中で著者は誕生する。
<中巻>
革命後の動揺がおさまらない中国で毛沢東は共産党員の過去をさぐる。国民党との関係で嫌疑をかけられる母。著者たち兄弟は保育施設に送られてしまう。想像を絶する迫害の日々―ついに逮捕された父は精神に異常をきたす。なんとしても夫を救いたい!母は周恩来首相に直訴すべく、北京行きの列車に乗る。
<下巻>
迫害を受け続ける家族。思春期をむかえた著者は、十代の若者が遭遇する悩みや楽しみをひとつも経験することなく急速に「おとな」になった。労働キャンプに送られる両親。著者にも、下放される日がついに訪れた。文化大革命の残虐な真実をすべて目撃しながら生き、「野生の白鳥」は羽ばたく日を夢見続ける。 (「BOOK」データベースより)
山崎豊子の「大地の子」を読んで、文化大革命に興味を持ったのです。中国映画「芙蓉鎮(ふようちん)」や「「シュウシュウの季節」で、ある程度は知っていましたが、これほどすさまじいものであったとは・・・・
「大地の子」における労働改造所の生活に唖然としていましたが、当時の中国人民は、みんな死ぬか生きるかの生活をおこなっていたということがわかりました。
そのころ日本では、「こんにちは~」と万博をやっていた1970年頃のことです。
そして1972年に、田中角栄・周恩来両首相とで日中国交正常化の調印が行われているのですが、隣の国の内情までは、全く知りませんでした。
古より、中国は、日本よりも優れた文明国家であったはずです。それが遥かに立ち遅れてしまった原因がようやくわかりました。
一人の人間が神のように奉られた恐怖政治が、9億もの人口がいるにも係わらず、ほんの30年前にあったこと、その迫害は四半世紀にも及んでいたことが恐ろしいことです。
人と人とが互いに憎しみあうようにしむけて、国を統治したとユン・チアンは毛沢東を批判します。人民そのものを独裁の究極的な武器に仕立てた。だから、倫理も正義もない憎悪だけの社会を作り上げたんだと・・・
また、毛沢東は、教育を受けた人間を憎み、無知を礼賛し、過去の優れた文化遺産までもほとんど破壊したとのことです。毛沢東だけが悪いはずはないのですが、国家というより、独裁者の思想が宗教のごとく、妄信されていくことの怖さですね。日本だって、その前は同じようなものでしたから。
今、中国はアジア最大のマーケットとして、インドとともに経済大国に急速に変貌しています。もともと能力の優れた人たちなのです。
日本人は、いまこそ隣の国のことをより深く知っていくときだと思います。
この本は、ノンフィクションながら、ドラマがあふれています。そして深い感動と希望を与えてくれる傑作でした。
|
ワイルド・スワン 上 (1) (講談社文庫 ち 4-1) 著者:ユン・チアン |







最近のコメント